恋するデザイン図鑑

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カテゴリ:ケーススタディ( 4 )


2008年 04月 15日

覗き見する広告

世の中に溢れる情報の洪水の中で、職業的感性に訴える広告類を除けば、人生に、そして生き方にいつの間にか影響を与えているのは、本と映画だろう。
どちらも、そこに登場する人々の生き様や時代を、よく言えば体感することができ、一番素直な表現としては「覗き見」ができるという特長を持っている。他人の人生を覗き見できるとは何と興味深いことか。僕達は、本を読んだり、映画を観たりすることで、自分とは違う世界を、ある時は気楽に、ある時は全身全霊で覗いてしまい、つかの間の喜びや悲しみ、怒りに浸ることになる。

では、そういう覗き見の心理を、b2bサービスの広告にも応用してみるとどうなるか?
試みてみたのが、この作品だ。

◎elnes work
◎商品(サービス):ネットワークサービス・マネジメントIIJ SMF
◎商品概要:企業ネットワークを運用管理するためのフレームワークを提供するサービス。従来は複雑で大きかった人的な
付加も軽減でき、従って、コストダウンも実現したこれからの時代にためのソリューション。
◎クライアント


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このWANには、秘密にしたいワケがある。

(成功する企業のインターネットVPN導入会議・議事録の抜粋)
>主任:VPN設定時間を30%削減できるので、やっぱり(マル秘)でいきますか。

>係長:エンジニアの初期設定コストを(マル秘)は90%も削減するらしいわね。

>課長:(マル秘)が保守コストを50%削減するというウワサもホントみたいよ。

>部長:結局、我が社のインターネットVPNは(IIJ SMF)で決まり!ってワケね?

>全員:あッ、ボスがペロッと言っちゃったよ・・・・ライバルに差をつけるまではconfidentialだったのにネ。

それは、ライバルたちが嫉妬する[運用効率×経済効率]

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以上が「覗き見」に関係する部分のコピー。読んでお判りのように、このネットワークソリューションの
PRの世界は実際そうなのだが、用語からして難解な印象を与えてしまい、難しいままに
終ってしまう例がほとんどだ。せめてibmやsapの領域まで引き上げることができればと、
柔らかい表現でのアプローチを試みた次第である。

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by elnes | 2008-04-15 15:40 | ケーススタディ
2008年 04月 14日

顧客に語りかける人=商品カタログの表紙に登場するモデルの選び方

b2bの商品やサービスを人をたてて顧客企業にお薦めする機会や場所は様々だが、概ね
(1)対面で
(2)電話で
(3)広告で、の3つに分けることができる。
ここはもちろん(3)に限ってのことだが、そして知名度の高い有名人に語ってもらう手法を除けば、どんな人が最適なのか、つまり顧客企業にサービスを紹介しそのメリットを語ってもらう場合、どんな人が説得力を備えているのか、を考えてみたい。
この場合、人は2つのタイプが考えられる。
(a)広告企業の代表者や開発責任者
(b)ユーザ
このa、bはさらに、2種類の演出が考えられる。実在の人物、つまりリアルの場合とモデルの場合。前者の例としては、よくあるのが会社のボスを出して来るもの。しかしこれははたして有効だろうか。紙面からは自己満足と言う4文字が透けて見えて来るだけのように思える。たとえ社長→担当役員→開発部長→開発責任者と若返るだけでは、やっぱり絵としての魅力や説得力は感じられそうもない。もちろん、登場人物がモデルにひけを取らない存在感(絵になる素質)と奥行きのある演技力を備えている場合は例外だが。

そこで、少し(というよりも、かなり)古くなるが、そのオリジナリティやクリエイティブの高さでは、いつも持続するパワーを備えているsap japanの雑誌広告を並べてみたい。

◎sap japan の雑誌広告*

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*Harvard Business Review auguast 2003

いづれもモデルを使い、sapのサービスを採用した企業顧客のハッピネスを訴求した、非常に完成度の高い、従って見る者をその気にしてしまうパワーを持っているが、クリエイティブの視点から注目すべきは、共に情感豊かな表情の人物写真を添え物に、顧客の独白=コピーを主人公にしたところであり、ここに勝利の法則が潜んでいるということだ。絵とコピーの絶妙な強弱が、そしてバランス感覚が、この広告の成功のすべてと言っても過言ではない。
そして不思議なことに、こんなに魅力的なボスやチャーミングな女性など、都合よくいるはずがないというもっともな猜疑心も、優れたアートディレクションを前にすると意識下の闇の中にいつの間にやら消え去ってしまうことも、経験的に僕達は知っている。

さて、上記の基本を踏まえ、サービスカタログの表紙用に作ってみると、こうなってしまう。
◎elnes work

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◎商品(サービス):ホスティングサービス
◎商品概要:仮想化テクノロジを採用した新しいコンセプトのホスティングサービス。仮想マシンを自在に設置できるプラットフォームを提供し、システムの可用性と信頼性を格段に高めることができた。
◎クライアント
◎ソリューション:たとえば、1台の物理マシン上にweb serverからdb serberまで仮想マシン環境を柔軟に構築できる上、これらの仮想サーバは干渉されることなく、独立して稼動、また万が一の物理マシン障害時には、自動的に別のマシンにシステムの立ち上げも可能にするなど、冗長性にも優れている

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by elnes | 2008-04-14 20:55 | ケーススタディ
2008年 04月 09日

international business machines社風のクリエイティブ

一昔前、人は見た目が9割と言われていたが、最近はもう見た目で10割、つまり第一印象ですべてが決まってしまうらしい。ますます油断もスキもない世の中になってしまったようだ。初対面時、ペラペラ話したり、フムフム聞いたりするのとは別に、人の脳は他方で意外と原始的な(動物でいえば他の種族とバッタリ出会ったりした際のとっさの判断、つまりこいつは有害か無害かを瞬時に決定し次の、飛びかかったり、逃げたり、の行動に移るための判断を与える)部分がピコピコと活発に活動しているそうだ。この「種の進化」のなごりがヒト科といえども、第一印象で相手を食える奴とか食えない奴とか、決めてしまいがちなのである。

b-to-bのソリューション広告は、ユーザ・ハッピネスが決め手

ところで、見た目で決まると言えば、その最たるものの一つが広告。従って、その外見には気を使うものである。特に、b-to-bのit業界では新しいテクノロジ上で生まれる商品やサービスがほとんどで、これら新技術に依拠したサービスやソリューションを「絵説き」によって、つまり絵的に説明し、理解してもらおうとすると、複雑になったり、窮屈になったりで、外見までなかなか手が廻らない。少なくとも、「絵説き」よるアプローチは、見た目まで気を使う余裕を与えてくれない。
そこで、クリエイティブディレクターは考える。この分野での成功の鍵は、表現の落し所を「ユーザのハッピネス」とすること。そして、その「幸せ」をどうやってサービスに結び付け表現するかにかかっていると。言い換えると、顧客の笑顔の数だけサービス(つまり広告)の種類もあるはずである。
また、世界のit分野のリーディングカンパニーの多くがこの路線を追求しており、中でもibmのそれは、今日まで圧倒的で一貫した存在感を僕達に見せつけてくれている。ワールドワイドのためなのか、日本人的感覚には?のクリエイティブも中にはあったが、着地点はいつも顧客=成功する企業や成長を続ける会社と働く人々の幸福なのである。

◎日本ibm「スペシャルになろう。what makes you special? 」雑誌広告シリーズ

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※最近のi社は「スペシャルに」から新しいシリーズ「コントロールを取り戻せ。take back control」を展開中。相変わらずこのクリエイティブの切れ味も抜群。例えば少し前の雑誌・日経情報ストラテジーには「コントロールを」が、これでもかとばかりマルチ展開されていて、質の高さは競合他社を圧倒している。
※余談で恐縮だが、上記のアートディレクションで注目して欲しいのは、ここで使われているオレンジ(中)とシアン(右)。
このカラーのトーン&マナーもまた一流の証明である。おそらくこのイケてるadは悩むことなく、無意識の内にオレンジを指定し、次は当然のようにシアンを使ってしまったのではないか。参考までに僕の作品も並べておく。

◎elnes works

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そこで、企業イメージを高めるi社ライクなクリエイティブへの試み

アウトソーシング企業のネットワーク監視運用サービスカタログ制作にあたり、ユーザ・ハッピネスをテーマにしたイメージビジュアルの提案をさせていただく機会に恵まれたので、そのサムネールを事例として提示したい。

◎商品(サービス):ネットワーク監視運用サービス
◎商品概要:オペレーションログから障害情報まで、監視運用情報をポータルサイトからリアルタイムに提供しネットワーク監視の「見える化」と、一元管理を実現している。監視サービスのメニューも、顧客が自由に選択でき「必要な機能だけを最適は仕様で」提供するために、3つのラインアップで構成されている。
◎クライアント
◎ソリューション:当サービスの採用により、煩わしい監視業務からお客様を解放、マンパワーを本来の業務に投入できるため、結果的に情報システム部門の効率向上に貢献する。→顧客をハッピーに。
◎クリエイティブの方向性
・ サービスの特長である3つのラインアップをシンボリックに表現すること。
・ このシンボルと顧客の関係性をテーマにしたビジュアルを開発すること。

そこで、まず3つのラインアップのアイキャッチ化したもの。
最初のアイデアレベルだが、3つの引き出しとかボックスのようなイメージとして。

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次に、このシンボルをフューチャしたサムネールを3種類作成したのがこれ。(写真はレンタル)
・ a:i社風なサービスがわが社にもやって来た編
・ b:サービスが地上に舞い降りる編(新しさ、登場感訴求)
・ c:3つのラインアップを主人公にすると編

◎案a:サービスがわが社にもやって来た、i社風な編


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使う直前の、顧客が幸せになる一歩手前の顧客と商品の関係をユーモラスな表情で表現。役員から若い社員まで整列して、仰々しく当サービスを出迎えています。「成長する企業が選ぶ・・・」のコピーから、かれら4人組は成長する企業の人であることがわかります。このカタログを手に取った情報システム部門に勤める担当者も、従って「これは自分の会社に関わること」だと理解し、ページを開くことになります。

◎案b:サービスが地上に舞い降りる編  ◎案c:3つのラインアップを主人公にすると編

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なお、結果的にはこれらa、b、cともにNGとなった。訴えるべき優先順位をよく理解していなかったためだが、個人的にはaは、i社風に近づいたような気がするのだが、どうだろうか。
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by elnes | 2008-04-09 23:50 | ケーススタディ
2008年 04月 08日

プレゼンテーション2つのアプローチ


◎商品(サービス):到達性を保証してくれるeメールソリューション
◎商品概要:今日、ビジネスの現場ではひと時も手放せなくなったeメールだが、きちんと相手に迷うことなく、届きかつ読まれているのかをいちいち確認しないままに、多分読んでくれてるだろう程度の淡い期待を勝手にメールに寄せているのが現状である。
このメールにまつわる不確実性を取り除き、リアルタイムでも記録としてもend to endで追跡、時刻認証などの配達記録を確認できるというのが、このサービスの大きな、そして初めての魅力である。
◎商品スローガン:「新しい時代の安全で信頼性の高いメール環境を実現」(付与)
◎クライアント


180°の相対する角度から考える2つの表現アプローチ

このeメールサービスのリリースにあたりチラシを作ることになり、デザイン案としてa、b二つを提案をすることになった。どちらも顧客メリットを訴求するための表現案としてだが、結果的にa、bのどっちが採用されたのか、おわかりだろうか。
前提として(僕の場合プレゼンの基本だが)a案は可能な限り要素をそぎ落とし、シンプルで象徴的な構図とアートとしての完成度を狙ったものであり、これとは対照的にb案はクライアントの要求を可能なかぎり取り入れ、同時にそれら商品(サービス)メリットを絵的にも説明し、ストレートな訴求効果を追求するものとなる。
aとbは必ずしも対立する手法ではないが、基本的にはシンボリックな表現 vs 絵解き(説明的)表現として、相対化されることが多い。今回の場合も同様である。

◎アプローチa:
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1)一日の仕事が終る頃、夕闇が迫る都市の上空に浮遊する白い封筒―というのが基本のイメージ
2)この手紙に書かれているメッセージ「そのeメールは、17:55に開封されました」
3)そして、これを補強するキャッチコピー、
「今までなかったのが、不思議です。メールの到達性をきちんと保証するサービス登場。」
この3つの要素でメインイメージを構成。
また、イメージを作る上で次のキーワードに留意することに。
「先端のビジネス、eメール、業界初、登場感、時代の流れ」
※「そのeメールは、17:55に開封されました」はダミー

◎アプローチb:
これに対してb案は、主張したいことがいっぱいあるeメール環境の問題点や課題を並べる手法を採用。
上空を浮遊するたくさんの封筒がそれぞれ、ワイワイガヤガヤいろんなことを言い、ユーザの共感を獲得しましょうと言うもの。
当初この絵を補強するキャチコピーとして

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としたが、不安を訴えることで注目を引かせるのは、かつてコンドリーザ・ライスが「やがて我々は巨大なきのこ雲がN.Y上空に現れるのを見ることになるだろう」とありもしないイラクの核兵器をデッチ上げて不安を煽り、国民を脅迫して戦争に動員した汚いやり方と同じ手法ではないかと思い直し、

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とブレイクダウンしたつもりだが、またこのコピーだけを見ると、端的でまとまってはいるのだが、aと比較してbをbたらしめる「ワンクッションおかずにストレートに訴求する」立場がまだまだ弱いように思え、結局ストレートすぎるほどストレートなコピーに落ち着くことになる。

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せめぎ合う2つのアプローチ

アートディレクションの立場から、お薦めするのは当然のことながらaである。
デザインの構図がシンプルでシンボリックであり、加えてコピーは赤裸々さがワンクッション置いた最初の一行で覆い隠され、堂々としたトーンでまとまっている、つまりデザイン+コピーのマナーの高さ=商品イメージの高さをもプラス・アルファとして付与しているように思われる。
bはその逆かと言うと、そうでもないが、上に挙げたポイントで比較すると、明らかに低いと言わざるをえない。問題は、bがこれらのマイナスを引いてしても余りある強さを備えているか、ということにある。
顧客の目線でみると、どうだろうか。
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by elnes | 2008-04-08 18:40 | ケーススタディ