恋するデザイン図鑑

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2008年 04月 22日 ( 1 )


2008年 04月 22日

人はどう生きるのかを突きつけられる、『存在の耐えられない軽さ』

b0135738_2150571.jpg池澤夏樹さん個人編集による、装丁を含め新鮮なイメージのする世界文学全集(河出書房新社)の第2回配本がミラン・クンデラのこの物語「存在の耐えられない軽さ」だ。
まず何よりも、西永良成さんの翻訳が素晴らしい。クンデラがこの物語にかける実験的とも言える精神世界に、濃密で独特な、アートディレクター的に言うとオリジナリティ豊かな装飾を施すことに圧倒的に成功している。

ところで、このチェコスロバキアの物語を読み続けるうちに一本のギリシャ映画を思い出してしまう。誰か覚えているだろうか、若き日の池澤夏樹さんの字幕によるテオ・アンゲロプロスの「旅芸人の記録」。どちらも、政治が個人の生活に絶対的に介入する時代に、人はどう生き延びるのか━おまえは、一体全体どっちに転ぶのだ、と僕達の胸のあたりに荒々しく手を突っ込んでくる。そして僕達は、否応なく主人公と一緒にその過酷な、もうひとつの同時代を生きて行くことになる。

社会主義の仮面をかぶったスターリン主義体制下の人々が分断を強制される中で、濃厚で満たされた人間関係を持続することは可能か、人は何を失い続け、最後に残ったものがあるとしたらそれは何か。二組の男女の生き様から、お互いを尊重し協調していくことの一瞬の幸せと永遠の難しさ、この相反する二つを不安定なヤジロベエの両極の重しにして、物語は結末に向かって進んでいく。
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by elnes | 2008-04-22 21:55 | ブック