恋するデザイン図鑑

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2010年 03月 30日

喜劇のコツは・・・何かに徹しようとする人間と社会の常識がかみ合わない庶民の溝をはっきりさせること。

━役者 三国連太郎(87)『兵役を逃れるため、大陸密航を企てる』より
朝日新聞3/29(月)夕刊「人生の贈りもの」その1

三国連太郎は、近頃「釣りバカ」で有名だが、今は亡き左幸子とガップリ四つに組んだ「飢餓海峡」(内田吐夢監督作品・1965年)が、実は代表作だと思っている。もはや数少なくなった映画界の奇人とも噂される今年87歳の老人の、この言葉には何かしらの重厚さを感じてしまう。
<喜劇のコツは、例えば釣りとか、何かに徹しようとする人間と社会の常識がかみ合わない庶民の溝をはっきりさせること。>

このように、フレーズが重く、箴言めいてくるには、そこに含まれるワードとフレーズ全体の普遍性が不可欠となる。つまり、「喜劇のコツ」の「喜劇」に他のワードを勝手にあてはめても、にもかかわらず、そのフレーズ全体が依然としてしっかりと立っていることが重要なのである。

例えば、「喜劇」の代わりに「広告」と入れてみる。<広告のコツは、・・・・何かに徹しようとする人間と社会の常識がかみ合わない庶民の溝をはっきりさせること。>確かにその通りとも言えなくはなさそうだ。広告は、フツーに作っても誰も振り向いてはくれない。社会常識に反旗を翻すことが成功の近道となる場合も今まで多く見てきている。心に残る広告とはそのようなものであり、もちろん、広告にとどまらず映画を含めたアート一般にも広く言えることである。

この、本人の自覚・無自覚にかかわりなく、その言葉が気が付くと、いつの間にやら箴言化してしまっているという箴言名人が、コピーライター秋山晶である。
例えば、すぐに思い出すのが、<時は、流れない。それは積み重なる。>これはウィスキーかバーボンの広告のキャッチコピーだったと記憶しているのだが、そんなことはどうでもよく、この場合は、「時」の代わりにどんな言葉を入れても、きちんと立ってくれる、そんな完成度の高いコピーである。試しに「人生」でも「仕事」でも「女の子」でも、これとは思うワードを入れてみると、各人それぞれの生きてきた足跡みたいなものが見えてくるはずである。ちなみに僕の場合はどういう訳か「お金」だけは逆立ちしてしまい、成立しないのは何故か。

ところで、話しは三国連太郎に戻るが、『兵役を逃れるため、大陸密航を企てる』というタイトルでもおおよそ見当がつくように、朝日新聞の記事を読むと、彼の青春もまた、当時の社会常識に反旗を翻し続けた、拍手喝采の人生でもあったことが紹介されている。(これと似た事例として、小説家堀田善衛が挙げられる。戦争末期の東京大空襲の直後の1945年4月頃、海軍の飛行機に金を払って乗り込んで上海に亡命?し、敗戦後もそこで暮らしていたようで、何を思いつめての行動なのか、何故、上海だったのか、興味がつきない)

b0135738_182420.jpg堀田善衛の死後、発見された上海時代の
日記をまとめた『上海日記 滬上天下一九四五』


その点、「死は恐ろしくなかった。反戦とか厭戦とかが、思想としてありうることを、想像さえしなかった」などと熱烈な皇国青年であったことを自慢のタネにしながら、無念にも天皇制ファシズムの犠牲となって命を落とした多くの彼の友達とは違って、何故か兵役に志願することもなく、自らはしっかりと生きながらえてしまった評論家吉本某とは、その生き方において雲泥の差をみるのは、僕だけか。
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# by elnes | 2010-03-30 01:23 | 今日のフレーズ